日本在住フリーランスWeb制作者が外資系Web制作会社でどんな風に働いているのか

日本在住フリーランスWeb制作者が外資系Web制作会社でどんな風に働いているのか


「海外で働く」ということを、将来の目標としている人って、多いんじゃないかなと思います。(私もそのひとりでした)いつか、そういう仕事ができたらいいなと思いながら過ごしていたときに、思いがけずチャンスが飛び込んできたので、アタフタしながらも必死に喰らいついてみたら、あっという間に1年半が経っていました。

コロナ禍の現状では、結局リモートで自宅で働いているので「海外で働く」というのとは微妙に違い、「日本人以外の人と働く」という方が正しいかもしれません。

私自身はたいして英語が得意でもない、技術力がそれほど高くもない一介のフリーランスのWeb制作者なのですが、イギリスのWeb開発会社 Human Made で業務委託としてお仕事させていただいています。
こういう仕事の仕方をしているフリーランスWeb制作者が少ないな、と感じたため、まとめて記事にしてみようと思った次第です。

プロジェクトに参加した経緯

インフラプラットフォーム提供とWeb開発を行うHuman Made

Human Made はイギリスでスタートした会社で、社員は世界各国に80人ほどおり、全員フルリモートで働いています。
主なプロダクトはAWSを組み合わせたインフラ Altis(アルティスと呼んでいます)にWordPressを乗せたWebシステムの提供と、Webサイトのカスタマイズです。出版、銀行、ヘルスケア、ゲーム業界など海外の大手企業が主なクライアントで、アクセスの多いメディアサイトやセキュリティの厳しい大規模Webサイトを得意としています。

ジョインした経緯

WordPressコミュニティで知り合った方から、「クライアントサポートとして手伝ってもらえないか」とお声掛けいただいたのが2019年10月でした。当時、日本人の社員は、その方ひとりだけでした。

テレビ局が運営するエンタメ系Webサイト:フジテレビュー!!

クライアントはフジテレビのエンタメWebサイト「フジテレビュー!!」。「世界中を井戸端会議に」というコンセプトで、テレビ番組だけでなく様々なエンタメ情報を発信していくサイトです。
Human Made にとっては、日本で最初に手掛けた案件でした。
ちょうどサイトをオープンしたばかりでしたので、記事を投稿する編集者さんのサポートをしたり、バグ対応やカスタマイズのためのタスク管理業務などを担当させていただきました。

多国籍チームメンバーでの時差問題

プロジェクトマネージャーはオーストラリア、コードを書く開発者はインド、インフラチームはイギリスをはじめとしたヨーロッパ各国、クライアントサポートは日本、という多国籍チームメンバーではじまりました。現在はチーム編成が多少変わりまして、インド、香港、ニュージーランドと日本、というメンバーです。

スペイン在住の開発者がアサインされたことがありましたが、この時難しかったのがやはり時差の問題です。日本とヨーロッパの時差は8時間あり、17時ごろ「そろそろ今日の仕事は終わりかな」という時間に開発者が業務を始める、という毎日でしたので、必然的に日本側が夜遅くまで働くことが多くなりました。

実感として思うのは、多国籍メンバーで仕事をする上で、オンタイムでコミュニケーションを取らなければならない場合には、許容できる時差は最大で4時間までかな、ということです。

日々の業務の進め方

毎日のStand Up ミーティング

基本はアジャイル開発の手法でスプリント形式のため、毎日15分のStand Up ミーティングをzoomで行ないます。話し合う内容は、開発者の進捗報告と、開発を進める上で障害となっていることの解決です。

JIRAを使ってプロジェクト管理

普段、私の担当している別のプロジェクトではBacklogを使うことが多いですが、ここではJIRAを使います。
作業見積もりは、金額や時間ではなく、タスクの難易度でフィボナッチ数(1, 2, 3, 5, 8, 13)を使います。
チケットは、英語と日本語の両方で書きます。

開発者はGitHubでコードを管理

これはまあ、普通ですね。クライアントサポートである私はコードを触ることはないですが、開発の進行状況をGitのコミットで知ることができます。

クライアントサポートと改善提案

システムの使い方をサポートしたり、Webサイトのアクセス解析をして現状を分析し、将来的にPV数を増やしていくための改善策を提案します。
基本レイアウトは既にできているサイトですが、機能追加にともなうデザイン変更やアイコン作成など、ちょっとしたデザイン業務も行ないます。

英語はSlackチャットならなんとかなる

英語話者との会話はSlackチャットでなんとかなりますが、問題は毎日行われるzoomミーティングの時ですね。
リスニングについては、普段から英語のポッドキャストを聞くことも多いため、相手の言っていることは、だいたいわかります。それでも8割くらいかな。
聞き逃したことがあったら、後でチャットを送って再確認します。
スピーキングに関しては…… 私の話す英語はイマイチなので、なかなかうまく伝わりません。画面共有して必死に説明したり、それでもうまく伝わらない時は、やっぱりミーティング後にSlackチャットで説明します。

学校での受験勉強のおかげでライティングはある程度なら大丈夫ですが、それでも翻訳ツールはDeepLとGoogle翻訳を両方使います。
日本語は主語が曖昧になりがちなので、日本語から英語を考えるときには、なるべく主語・動詞・目的語をハッキリとさせます。
可能なら、箇条書きにして読みやすくします。
そして、気分を盛り上げたいときには絵文字を使うようにしています。

第2外国語として英語を使っている人とのコミュニケーションは割とスムーズで、英語ネイティブの人との場合は、表現がこなれているせいか、私の方は???となることも結構あります。

Slackでの会話は逐次自動翻訳ツールを使う

日本語でクライアントと会話するチャンネルでは、もちろん日本語でチャットします。ただし、どんな内容を話しているのかを開発チームにも知ってもらうために、Slackに連携できる自動翻訳ツールを使っています。

精度がイマイチな時もありますが、コメント投稿と同時に翻訳がスレッドに投稿されますので、とても重宝しています。

日本と海外を結ぶ「ブリッジエンジニア」

将来的に日本に進出したい外資系企業は、他にもたくさんありそうです。
とはいえ、まずやはり言語の壁がありますし、海外との取引に慣れていない日本国内の企業と、日本の顧客を獲得したい外資系企業(特にSaaS)の間を取り持つ仕事というのは、今後もニーズがあるのではないかなという気がしています。

日本独自の商習慣や日本語の文字情報を扱う上で起こりうる問題を理解した上で、日本のクライアントと海外の制作者の双方を阿吽の呼吸でバランスをとりながらサポートする業務は、なかなかやりがいのある仕事です。

このような業務をする人のことを「ブリッジエンジニア」とか、「ブリッジSE」と呼ぶらしいですね。
友人に教えてもらって初めてこの呼び名を知ったのですが、なるほど、「ブリッジ(架け橋)」とはよく言ったものです。
だとすると、オフショア開発のプロジェクトマネージャのことも「ブリッジエンジニア」といえそうです。
実のところ、コロナ前に考えていたこととして、「アジア地域のどこかに住んで、日本のクライアント向けに開発をしているエンジニアのサポートをする仕事をやってみたい」というのがあったのですが、もうあまり現実的ではなくなってしまいましたね、、、。

これからどうしていくのか、ゆっくり考えたいと思います。


shoko administrator

フリーランスのWeb制作者。WordPressのサイト構築、およびWebデザインとディレクション。専門学校HAL東京にてWEB学科の講師をしています。WordPressコミュニティに出没。趣味は合気道。