高齢の両親に会いに行く理由

高齢の両親に会いに行く理由


先に言っておきますが、全く役に立つことは書かれておらず、これはただのおばさんの日常です。

両親が80代になった

先日、実家の父が88歳となり米寿を迎え、母は2023年末に80歳になりました。

父は大手電機メーカーの物理エンジニアで、定年まで研究所で勤め上げました。今でも父の本棚は色々な資料がギッシリ詰め込まれています。リソグラフや超音波など我々の現在の生活に身近なものに加え、半導体、量子コンピュータ、などのキーワードも見受けられます。子どもの頃は、父の職業が何なのかよく理解していませんでしたが、2024年の今、父の本棚を眺めていると、「40〜50年前からこれらを研究していたのか」と驚きと感謝の入り混じった複雑な感情が私の中にあります。

頑固でこだわりの強い老人

そんな父は、昔から几帳面な人でした。
父の机の上にあるものを、1cmでも動かそうものなら「今日、誰か俺の部屋に入ったな?」と気づかれました。それでもお構いなしに、私は子供の頃よく父の不在中に書斎で宿題したり、テレビを見たりして過ごしておりました。父の部屋からは近くの森が見えましたし、眺めの良い落ち着く場所だったのです。

父は若い頃から「物の置き場所や使用方法にルールを作る」傾向がありましたが、高齢になり、そのこだわりはますます強くなりました。

物の置き場所や使用方法にルールを作る

たとえば食事に関して言うと、もちろん食材の内容は父の好みや体調を考慮して母が用意しますが、問題なのは食事をする際の手順、皿の種類から位置、お茶の温度に至るまで父の嗜好があるのです。

父が自分で冷蔵庫のものを取り出して皿に盛り付けることができた時はよかったのですが、足腰が弱くなってしまい、椅子から立ち上がるのが難しくなったことで、母に頼んで動いてもらうことが多くなりました。

他にも布団の敷き方、部屋の温度と湿度、加湿器の使い方、薬の保管方法、トイレ用品の設置方法、椅子に置くクッションの角度に至るまで、父は自分の考えた「最も良い方法」があり、それらはすべて「データに基づいたものである」と言います。

ある日の父の昼食
ある日の昼食:魚、肉、野菜、海藻、豆、米、タンパク質などすべてを取り揃える

生涯研究ひとすじだった父は、あらゆるデータを手帳にメモしています。自分の体調や周りの物事を毎日事細かに記載することにものすごい執念があります。ほんの少し前までは、新聞の気になる記事を切り抜いてスクラップするのが日課でしたが、それも難しくなり、すべてを手帳に記載するようになりました。

私の実家には1980年代にNECのパソコンがあり、1990年代には初期のMacがあったくらいコンピュータには馴染んでいた父ですが、スマホの波に乗ることはなかったのが、私にとっては心底意外なことでした。先日アレクサを持っていったときにも、喜ぶと思いきや興味がなさそう(というより、自分の体調を整え生活するのに精一杯)な様子で、「毎日を生きるだけで大変なんだよ」と言っていました。

頻繁に実家に帰るようになった娘

実家は電車とバスを乗り継いで片道2時間弱の場所にあり、私は25歳の時に一人暮らしを始めてから、実家に帰るのは毎年盆と正月の2回のみでした。

自分のことで毎日忙しく、仕事、子育て、家事、趣味の活動も含めていつもフルパワーで活動しており、両親の事を考える余裕もなく生活してきました。
そんな私も50代を迎え、子どもは成人して早々に離れて暮らすことになり、夫婦二人の生活がスタートした頃、ふと気づくと両親はすっかり後期高齢者と呼ばれる年齢になっていました。

盆と正月しか帰省しなかった私ですが、次第に実家に立ち寄る頻度が増えていきました。

いざ亡くなった時の自分のショックを軽減したい

なぜ頻繁に実家に帰るようになったのかというと、「いざ亡くなった時の自分のショックを軽減したい」これに尽きます。

「もっと会いに行けばよかった」
「何かできることがあったのでは?」

亡くなった後で、そういう思いを自分はしたくないのだと思います。
何の前触れもなく、ある日突然亡くなってしまう、というのが最もダメージが大きいパターンだと考えています。なるべくなら「やれることはやり尽くした。言いたいことも言った。私はできるかぎりのことをしたし、悔いはない」というところまで行ってから送り出したいと考えています。

ということで、特に用事はないけれど、今日も実家に行ってきます。

父の木版画作品:干支12年分の年賀状の木版が自宅のどこかにあるはず
今年の干支、辰年はPhotoshopで加工したものを印刷して出力

shoko administrator

フリーランスのWeb制作者。WordPressのサイト構築、およびWebデザインとディレクション。専門学校HAL東京にてWEB学科の講師をしています。WordPressコミュニティに出没。趣味は合気道。